1994年　Ａ５判　P464　帯・カバーおよび小口時代シミ多、汚れ　帯少穴

“列島古層の「神の系譜」を跡づけた〈民族学〉幻の名著完訳
昭和38-39年に独文で発表され、書名のみ知られながら、ほとんどだれも本格的に取り組み、論じようとしなかった民俗学＝民族学の画期的論著の完訳。猟師および山稼ぎ人の山の神、古栽培民（焼畑農耕民）の山の神、農耕民の山の神の文化層をはじめて析出し、「山の神」信仰の汎世界的な資料を紹介しながら位置づけた幻の名著。”（帯文）

目次：
序
凡例

【第一部　基礎的概念】
0　序論
　0-1　文献
　0-2　研究状況
　0-3　日本における「山」と「森」
　0-4　本論のテーマと問題
1　『古事記』と『日本書紀』の神話
　1-1　神話のテクスト　｛1-1-1　生誕神話／1-1-2　その他の神話｝
　1-2　神話の分析　｛1-2-1　生誕神話　山の神々の数　「山の最高神」／1-2-2　神の名称と本質／1-2-3　被征服地の山の神々｝
2　山の神―猟師および山稼ぎ人の神
　2-1　「動物の王」　｛2-1-1　動物態の山の神／2-1-2　狩幸の贈り手（・2-1-2-1　さまざまな伝承　・2-1-2-2　狩のまえのお供えと祈願　・2-1-2-3　狩のあとのお礼、仕留めた獣の取り扱い）／2-1-3　その他の狩猟儀礼／2-1-4　家畜の庇護者／2-1-5　簡単な要約と伝承、狩猟神としての山の神と北ユーラシア緒民族の狩猟神との関係／2-1-6　追記　獣の霊ないし森の霊に関わる神話や伝説、昔話のモチーフ｝
　2-2　「山の主」　｛2-2-1　土地の領有者／2-2-2　樹木の主（・2-2-2-1　山の神の住まいとしての木　・2-2-2-2　伐採にあたっての供え物　・2-2-2-3　「初山入り」　小木や小枝を持ち帰ることとその用途　・2-2-2-4　森の創造者・維持者）／2-2-3　「樹木霊」（・2-2-3-1　神としての樹木　・2-2-3-2　助産者　・2-2-3-3　病気と治癒）／2-2-4　好色な特徴（・2-2-4-1　情欲的な山の神　・2-2-4-2　おこぜ）／2-2-5　簡単な要約　ユーラシアの森の神｝
3　山の神、農耕民の植生神
　3-1　山の神と田の神の交代　｛3-1-1　一般的なこと、焼畑経済／3-1-2　鈎引き／3-1-3　芸能的な表現／3-1-4　案山子｝
　3-2　山の神と死者の世界　｛3-2-1　死霊や祖霊の場所としての山、マレビト、祖霊としての山の神／3-2-2　山の神、祖霊、イニシェーション。山の神の妖怪的なものへの変質｝
　3-3　山の神と道祖神　｛3-3-1　火祭／3-3-2　笑い祭り／3-3-3　豊穣儀礼／3-3-4　道祖神｝
　3-4　古栽培民の要素　｛3-4-1　競争と占い（・3-4-1-1　走ること　・3-4-1-2　綱引き　・3-4-1-3　鞠投げと石合戦　・3-4-1-4　石合戦と人身御供　・3-4-1-5　競争と位置どり―陸と海、山の神と海の神）／3-4-2　儀礼的な狩猟／3-4-3　木花佐久夜毘賣と石長比賣｝
　3-5　山の神祭祀における「南方」要素
4　第一部のまとめ
要約
第一部註
参考文献

【第二部　補足的観念】
0　序論
1　十二山の神
　1-1　十二という数―十二様と十二山の神
　1-2　弓と矢
　1-3　烏
　1-4　太陽を射ること　｛1-4-1　日本の伝承／1-4-2　中国の伝承―射手ゲイ《「羽」の下に「升」》とその行為｝
　1-5　山の神と蛇との戦い
　1-6　十二神―神話上の「秩序の英雄」
2　年神
3　山の神と蛇
　3-1　蛇体の山の神
　3-2　スサノオと山の神は同じなのか　｛3-2-1　肥後和男氏の理論／3-2-2　「木の神」および「年の神」としてのスサノオ／3-2-3　スサノオと八岐大蛇との戦い／3-2-4　中国、朝鮮の蛇神話と日本の神話との近縁性｝
4　霊山とその神々
　4-1　霊山および虎、龍
　4-2　烏喰い
　4-3　運命の神
5　一つ目の山の神
　5-1　一つ目の山の霊
　5-2　一つ目の神々　｛5-2-1　合理的説明の試み―目の怪我／5-2-2　権五郎、一つ目の魚、一つ目の蛇／5-2-3　御霊と雷神／5-2-4　八幡／5-2-5　天目一箇神｝
　5-3　日本以外の一つ目の霊と神々／5-4　簡単な回顧
6　一本足の山の神
　6-1　日本の一本足の霊と神々
　6-2　日本以外の一本足の霊と神々
　6-3　日本の一本足の考えうる起源
7　まとめと結論
要約
第二部註
参考文献
補遺

〈解説〉
ほろ苦き国際交流―訳者あとがきにかえて（野村伸一）
焼畑文化論再考―『山の神』の評価をめぐって（檜枝陽一郎）
訳者略歴