2004年初版　四六判　P310、280　各巻帯僅スレ

【Ｉ巻】
“日本の妖怪変化、未開社会の〈マナ〉、西洋の悪魔やデーモンを比較考察し、人類文化を絶えず脅かしてきた〈未知なるもの〉への想像力の歴史を浮彫りにする。
古今東西の膨大な文献と民俗誌を渉猟して〈野生の思考〉のコスモロジーを探る。”（帯文）

目次：
プロロゴス
　｛「もののけ姫」はなぜうけたか／「プリンセス・モノノケ」はなぜうけなかったのか／アニマとアニメ／幻想する動物｝
Ｉ章　モノノケとは何か
　一　モノとは何か　｛モノとオニ　（・『日本書紀』の鬼　・『万葉集』の鬼　・平安朝の鬼）／オニとカミ　（・宣長の定義　・奇妙奇天烈なカミたち　・カミの物実　・荒ぶるカミ）／万能のゼロ記号　（・名づけえぬモノ　・浮遊する意味するもの　・名のタブー）｝
　二　ケとは何か　｛「物怪」か「物気」か　（・異字同義説と同音異義説　・古代の用法　・自然のケ　・気とイキ）／ケとキ　（・中国の気　・大極図　・道教の伝来）／ケとタマ　（・タマは外来語か　・中国の魂　・口はタマの出入口）｝
ＩＩ章　未開のマナ論
　一　モノとマナ　｛アニミズムとマナイズム　（・アニミズム　・死者の遊離魂　・夢の遊離魂　・日本の夢物語　・夢と現　・夢の通路　・マナイズム　世界各地のマナ　・マナとしてのセヂ）／マナはメラネシア語か　（・西洋のマナ　・マナ＝モノ説　・南方系文化との関連）／魔と原母　（・マヤ神　・クバの蓑笠　・隠れ蓑笠　・マーヤー神　・西洋に出没するマーヤー　・原母としてのママ　・マの不思議）
　二　未開の魔術論《マギコロギア》　｛狩猟採集民の魔術《マギア》　（・動物は兄弟、植物は姉妹　・豊かで自由で平等な社会）／農耕民の魔術《マギア》　（・自然の改造と人間関係　・妻は魔術《ウィッチ》　・内なるウィッチ　・ビッグマンとさかさ人間）｝
ＩＩＩ章　日本の魔物論
　一　外的自然の制圧　｛自然＝カオスの象徴としての蛇神　（・農耕は母親殺し　・夜刀神　・ヘビのカオス性　・ヘビの皇統　・三輪神婚譚）／蛇神の凋落　（・堕ちた雷蛇　・エロスの権化　煩悩のヘビ　・昔話の蛇婿　蛇女房　・変身譚の変遷）｝
　二　内的自然の抑圧　｛女性の抑圧　（・鬼《モノ》に喰われた女　・皇居は伏魔殿　・鬼との愛欲に狂った染殿后　・鬼《モノ》の正体　・嫉妬は本能か　・嫉妬の鬼　・女神の凋落）／他者の抑圧　（・御霊会　・怨霊たち　・菅公の怨霊　・怨霊の社会的意味　モノノケの変質　・崇徳の怨霊）／中・近世の魔物　（・楠公の怨霊　・付喪神　・一寸法師　・近世の魔物　・女の幽霊）｝

【ＩＩ巻】
“日本の鬼、古代ギリシアのダイモン、西洋中世の異端狩り・魔女狩り等の考察を通して人類の魔物観の普遍性と差異性を浮彫りにし、歴史に埋もれた意味を解読する。名づけえぬ対象を指す万能のゼロ記号〈もの〉をめぐる異色の人類文化史。”（帯文）

目次：
ＩＶ章　西洋の悪魔論
　一　古代のデモノロギア　｛ギリシアのダイモン　｛・ダイモンは守護神　・因果応報の車輪）／ローマのダエモン　（・ローマのパンテオン　・ローマの呪術　・ストリガと狼男）／善魔から悪魔へ　（・自然神の排斥　・『聖書』の反フェミニズム　・異教の神々の死）｝
　二　中・近世のデモノロギア　｛中世のデモノロギア　（・民衆とデモン　・破壊と隠蔽　・クリスマスの起源　・マリアの原像　・対抗魔術　・デモンの逆襲　・異端狩り）／近世のデモノロギア　（・さかさま世界の魔女　・魔女の社会的意味　・自然観の転換）｝
Ｖ章　比較魔物論
　一　魔物の時空論《クロノ＝コロロギア》　｛魔物の時間論《クロノロギア》　（・昼夜の狭間　・季節の変わり目　・人生の節目）／魔物の空間論《コロロギア》　（・リーメン　・市　・橋）｝
　二　魔術《マギア》の文化象徴論　｛境界の文化記号論　（・リーメンの意味構造　・カオスの魔力　・あべこべ世界）／性愛《エロス》の魔術《マギア》　（・異類婚譚　・愛の三角形　・未開の人格《ペルソナ》　・愛の呪法）／　西洋的思考/非西洋的思考　（・ロゴスとレンマ　・両義的な神　・仏魔一如　・意味文節世界の脱構築　・ディジタルとアナログ）｝
エピロゴス
　｛物の殺害／物の逆襲｝
参考文献
後記