1994年4刷　Ａ５判　P349　帯スレ、折れ跡　カバー少汚れ、背少剥がれ、上部少イタミ

“文明の深層にひそむ「力《フィアー》」
なぜ脅えるのか？
浮浪者や乞食の群れがパリの城門に押し寄せる時
生贄に四つ裂きの人間を捧げる時
母親が赤ん坊を取り替えて喰う時
ペストの急襲にすべての村人が死に絶える時
亡霊や悪霊が暗闇に跳梁する時”（帯文）

“かつての自然の脅威から現代の核戦争にいたるまで、人間はおびえ続けている。恐怖は征服するたびに、あらたに呼び起されるのだ。文明とは、人間が生み出した幻影なのか？”（カバー紹介文）

目次：
第１章　はじめに　｛恐れる必要のない者がよく眠る／豊かな想像力が恐怖を呼ぶ／子供に安全と恐怖をもたらす母／絞首刑見物で弁当を広げた人々｝
第２章　子供時代に恐ろしかったこと　｛危険と冒険に満ちた赤ん坊の世界／人はなぜヘビが嫌いなのか／学校が、テストが怖い子供たち／「いい子にしないと〜がくるよ」という普遍的脅し／おとぎ話が教えてくれる生きる知恵／ありとあらゆる恐ろしいものが闇に棲みついている｝
第３章　未熟な人間としての子供　｛子捨て・子殺しがあたり前だったヨーロッパ／虐待かしつけか？縛りあげられた子供たち／神様は地獄に堕ちた子供をどう懲らしめるか／少年ヒチコックが独房に閉じこめられた！｝
第４章　「恐怖のない」社会はあるか　｛密林のすべてと結びついたピグミーの世界／現代にかくれ住むエデンの人々／環境に適応してつつましく暮らせば｝
第５章　自然を怖れて　偉大な狩猟民と最初の農耕民　｛食人風習から狩猟による食糧の獲得へ／地上でいちばん幸せな住人、エスキモー／不安であがなった農耕技術の進歩／悪霊が農耕民を脅す｝
第６章　生贄と飢饉　｛この世にもあの世にも安らぎのなかったシュメール人／生贄は人間を四つ裂きにして／赤ん坊を取り替えて喰った中国の母親たち／飢え死に寸前に春に蒔いた種を掘り返す／人間の血を捧げることによってのみ、太陽はまわり続ける／声なき者のひややかな絶望｝
第７章　中世社会をふちどる暗黒　｛天使や悪魔とともに生活していた中世／世界の終末はいつやってくるのか？／山や森がタブー視されたのは？／人間に災いをなす獣たちへの動物裁判／神の啓示としての天国と地獄｝
第８章　死病におののく　｛なぜ病気になるのか／自然と人間の調和を重視する中国の病気観／コレラの大流行を静めるための祈りと断食／真っ赤に燃える彗星は災厄の前兆／患者の息で、死体の腐敗臭で疫病が伝染する／大砲の一斉射撃で空気を浄化する方法／墓地の敷地を押し上げた膨大な数の死体｝
第９章　魔女の出現　｛隣人が魔女かもしれない／邪悪な力が支配する暗闇を嫌う／食事中は絶対に他人を近づけない部族｝
第１０章　人間に由来する恐怖　亡霊　｛人間の愛情に限界はある／邪悪な亡霊か一族を護る亡霊か／「陰」の世界への入り口、墓地には亡霊が集まってくる／死者との縁を断ち切るために／語り継がれ、記憶される事実としての幽霊譚／肉親の亡霊でもご免こうむりたいもの／自ら吹聴した迷信におびえる密造者たち｝
第１１章　田舎に吹きあれる暴力と犯罪　｛暴力・犯罪という名の風土病／山賊のさらし首は市場のメロンより多かった／美しい森のなか、食いちぎられた死体が転がっている／自然のやさしさと苛酷さのはざまで／のどかな田園風景には搾取の歴史が溶けこんでいる｝
第１２章　都市の恐怖　｛中世都市の騒音公害とは？／大菩薩とともに頭上に建物が崩れ落ちる／暴走馬車が子供を殺す／火事のないところで安眠したい！／反目する一族の血なまぐさい争い／軽率なやつは遺言状も書かずに外出する／支配の象徴である城壁がとり払われる時／同胞あい恐れる町、フィラデルフィア／十九世紀の移民が味わった都市の恐怖／平和そうなチャイナタウンに渦巻く憎しみと敵意｝
第１３章　見せしめと処刑　｛両目をえぐり手足を切断するグロテスクな儀式／市場に必ず備えつけられたさらし台と足枷台／絞首台を目印にした旅行案内／縛り首競技会と呼ばれたロンドンのお祭り／公開処刑者たちが英雄になった｝
第１４章　流罪と監禁　｛パリから追放された乞食たち／不浄な癩病者の魂を救うための監禁／秩序維持のため勤勉な人間を作る総合施療院／地下牢でネズミと食料を奪い合う囚人／監禁の哲学と刑務所の倫理学／怠惰な貧乏人は隔離せよ｝
第１５章　空間の広がり　｛精神分裂病者と天才が恐れるもの／領地、家、体の境界線に守られて｝
第１６章　恐怖　過去と現在　｛恐怖が人間関係を緊密にする／人間にとっての究極の慰めと力｝

訳者あとがき（金利光）
参考文献
著者略歴／訳者略歴