アラブ、祈りとしての文学 岡真理 みすず書房

2008年初版 四六判 P311 帯付

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2008年初版 四六判 P311 帯付

“小説を読むことは他者の生を自らの経験として生きることだ。絶望的な状況におかれた人々の尊厳を想い、非在の贖いとしての共同性を希求する新たな批評の到来。”(帯文)

“もしもパレスチナの難民キャンプで傷付いた子どもの傍らにいたら、私たちはその手をとるだろう。ベツレヘムの街で自爆に赴く青年が目の前にいたら、彼の行く手を遮るだろう。だが私たちはそこにいない。
 小説を書き、読むという営みは理不尽な現実を直接変えることはない。小説は無能なのか。悲惨な世界を前に文学は何ができるのか。古くて新しい問いが浮上する。
 ガザ、ハイファ、ベイルート、コンスタンティーヌ、フェズ……、様々な土地の苛烈な生を私たちに伝える現代のアラブ文学は多様な貌をもつ。しかし名作品に通奏低音のように響く、ひとつの祈念がある。
 「かつて、そこで起きた、とりかえしのつかない、痛みに満ちた出来事の記憶。もう帰ってはこない人々。[…]作家は、頭蓋骨に穿たれた二つの眼窩に湛えられた深い闇からこの世界を幻視し、彼岸と此岸のあわいで、起こらなかったけれども、もしかしたら起こりえたかもしれない未来を夢見続ける死者たちの息づかいに耳をすます」。
 小説を読むことは、他者の生を自らの経験として生きることだ。見知らぬ土地、会ったこともない人々が、いつしか親しい存在へと変わる。小説を読むことで世界と私の関係性が変わるのだ。それは、世界のありようを変えるささやかな、しかし大切な一歩となる。世界に記憶されることのない小さき人々の尊厳を想い、文学は祈りになる。”(カバー裏紹介文)

目次:
1 小説、この無能なものたち/2 数に抗して/3 イメージ、それでもなお/4 ナクバの記憶/5 異郷と幻影/6 ポストコロニアル・モンスター/7 背教の書物/8 大地に秘められたもの/9 コンスタンティーヌ、あるいは恋する虜/10 アッラーとチョコレート/11 越境の夢/12 記憶のアラベスク/13 祖母と裏切り/14 ネイションの彼岸/15 非国民の共同体
あとがき
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