1997年初版　Ａ５判　P301＋索引P21　函僅イタミ　本体元パラ少折れ、少シミ　ページ数ヶ所に若干の開きグセ

「新たな万葉文化論の構想！
万葉歌、特に荒都歌・望郷歌・挽歌を中心に、その成立背景を、近時の考古学や民俗学などの成果を援用しつつ解明し、古代大宮人の生活と歌表現との関係を追及する気鋭の歌論。」（帯文）

“国文学の新地平へ　山折哲雄
　古典に向かうときの研究者の心得をあげよといわれれば、まず一つひとつの字句をなめるように追い、ついには眼光紙背に徹することだと、私は答える。
　本書の著者も、そこを狙っているようだ。その意気や好し。歴史学、民俗学、考古学などの成果をとり入れ、たんなる国文学の領域をこえた新しい万葉文化論を構想しているところが、さわやかで新鮮だ。”（帯裏紹介文）

目次：
総論　古代宮都の文芸としての万葉歌
　｛はじめに―本書のめざすもの／一　〈古代宮都〉という用語／二　儀礼の空間という視点／三　律令官人の文芸／四　〈大宮人〉の誕生｝


第一章　フルサト飛鳥とその〈景〉
　第一節　歴史的空間飛鳥の予備的考察
　　｛はじめに／一　飛鳥の範囲／二　飛鳥川と飛鳥／おわりに｝
　第二節　万葉語「フルサト」の位相
　　｛はじめに／一　「フルサト」と「フリニシサト」と／二　「フルサト」と「ヒナ」と／三　「ヒナ」と「ヰナカ」と「フルサト」と／四　大伴旅人の望郷歌から／五　大伴坂上郎女の「フルサト」／六　大伴家持と「フリニシサト」／おわりに｝
　第三節　古代宮都とカムナビ
　　｛はじめに／一　大場磐雄のカムナビ研究／二　カムナビという語／三　カムナビを山岳に対する呼称と限定することはできない／四　飛鳥のカムナビとカムオカ／五　故郷の景／六　用例の偏在が意味するもの／七　カムナビから三山へ／おわりに｝
　第四節　カムナビと〈王権〉
　　｛はじめに／一　大三輪のカムナビ〈三輪山〉と崇神天皇／二　飛鳥のカムナビと天武天皇／三　王権の論理と失われた祭祀と／おわりに｝
　第五節　カムナビの〈景〉
　　｛はじめに／一　神の帯せる川／二　吉備の中山／三　細谷川の伝承／おわりに／補論　山岳信仰と宗教的心性｝
　第六節　故郷・飛鳥思慕の文芸
　　｛はじめに／一　讃歌をもつ旧都・飛鳥／二　天武天皇降臨の聖地／三　平城遷都以降の飛鳥／おわりに／補論　天武皇統について｝


第二章　殯宮儀礼の空間
　第一節　殯宮という儀礼の空間
　　｛はじめに／一　殯宮という建造物について／二　殯宮の表現とその設営地／三　皇子・皇女の「殯宮」が〈生前居所〉の宮に設営されない理由／おわり｝
　第二節　殯と宮
　　｛はじめに／一　日並皇子挽歌の殯宮表現／二　頌から哀／三　日並皇子挽歌の殯宮表現の背景／おわりに｝
　第三節　天武天皇殯宮の芸能
　　｛はじめに／一　殯宮という芸能の場の伝統／二　殯宮の内外／三　天武天皇殯身やの芸能／四　天武天皇殯宮の前・後／おわりに｝
　第四節　奉誅者の系譜
　　｛はじめに／一　奉誅にともなう所作／二　奉誅の巧拙／三　奉誅される日継の性格／四　当麻真人智徳の登場とその立場／おわり―記紀成書化前夜の日継の担い手｝


第三章　万葉挽歌と葬送儀礼
　第一節　日並皇子挽歌と〈誅詞〉の受容
　　｛はじめに／一　日継の皇子の挽歌と〈誅詞の受容〉／二　歌の発想と質の違い／三　日並皇子挽歌の場／おわりに｝
　第二節　高市皇子挽歌と城上殯宮
　　｛はじめに／一　香具山宮／二　城上殯宮＝飛鳥説批判／三　高市皇子と城上殯宮―長屋王邸宅跡出土木簡資料を手がかりとして―／おわりに｝
　第三節　高市皇子挽歌と香具山宮
　　｛はじめに／一　香具山宮・埴安池・泣沢杜／二　神話の接合／三　「類聚歌林」の伝／四　持統十年秋七月の「祷祈」／おわりに｝
　第四節　人麻呂挽歌の枕と床
　　｛はじめに／一　人麻呂挽歌の枕と床／二　トコの荒らび／三　漢籍受容の問題／おわりに｝
　付節　身崎壽の挽歌史論をめぐって
　　｛はじめに／一　挽歌史の構想／二　天智挽歌群から「殯宮之時」挽歌創成へ／三　天武挽歌の「時」と「場」／四　「殯宮之時」挽歌の〈場〉／おわりに―〈場〉の論の可能性｝


第四章　結界と排除の空間構造
　第一節　結界の空間・飛鳥のオツナカケ
　　｛はじめに／一　オツナカケの現状／二　オツナカケの伝承基盤／三　オツナカケの機能／四　ツナの行事の広がりから／おわりに｝
　第二節　結界の空間・平群のオツナカケ
　　｛はじめに／一　オツナカケの現況／二　平群町椣原と鳴川の事例から／三　オツナカケ／おわりに｝

結論　万葉歌をめぐる歴史的空間
　｛一　飛鳥をはじまりとする意識／二　儀礼空間としての古代宮都／三　葬送儀礼と挽歌の〈場〉／四　研究方法に関する総括｝


参照文献一覧
収載論文初出一覧
図・表・写真一覧
あとがき
索引