澁澤龍彦の時代 幼年皇帝と昭和の精神史 浅羽通明 青弓社

1993年初版 四六判 P387+索引P9 小口少時代シミ、僅キズ 地少汚れ

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1993年初版 四六判 P387+索引P9 小口少時代シミ、僅キズ 地少汚れ

「膨大なモノが溢れ、若者がカプセルに籠って生きるようになった昭和末。それは澁澤龍彦の胎児〈ナルシス〉の夢が、玩物喪志〈「おたく」〉の志が、妖異博物館が、大衆化して偏在するに到った時代ではなかったか!? 全昭和史を貴種流離した幼年皇帝〈ラスト・エンペラー〉が少年少女の憧憬を集めた幸福なその晩年、鋭く訴えずにはいられなかった高度消費社会への違和感とは? 我らが平成を生きのびるための立志を賭けて今、放たれる壮大な昭和の精神史、書き下ろし七百枚。」(カバー紹介文)

目次:
序章 ぼくたちの失敗―なぜ澁澤龍彦なのか?
 {もはや異端ではなかった澁澤龍彦/ナルシスたちの自惚れ鏡/もっと強さを!―「E・T]、エコロジー、死刑廃止をめぐって/デオドラント・ニッポン―あるいは澁澤龍彦の時代}

【第一部 小年博物館長の宇宙】
第一章 優等生の秘かな愉しみ―娯楽としての博物館
 {ボマルツォの森への憧憬―夢の館の案内者としての優等生/田中康夫の目に博物館はどう映ったか?/澁澤龍彦が棲む異郷―図鑑の国、標本の国、剥製の国/優等生たちの「夢の国」―現実逃避としての学問と思想/見世物としての「知識」―包装紙としてのペダント/アトランダムというスタイル―終わりなきイメージ羅列の魔境/結論を出せない知性―これは啓蒙書ではない/綺譚読みもの作家という見世物師}
第二章 眼の欲望によってもぎとられた蒐集物〈コレクション〉、さえも
 {目の前へごろりとなげだされた「もの」自体/男性のオナジズム―性器と眼だけしかない化け物/ダンディズムの密室へこもる剥製蒐集者/紙と貨幣、あるいは澁澤龍彦の目が君臨する専制王国/膨大な商品の集積としてのみ現象するアイデンティティ/自己言及と規範―何がコレクターを退廃から救うのか}
第三章 あるいは宇宙模型でいっぱいのおもちゃ箱
 {「もっとも役に立たないもの」の方へ/宇宙に君臨しようとした人々の群れ/「宇宙の雛形」を蒐集して「宇宙の雛形」を造ること/デミウルゴス・コンプレックスを考える/金無垢のエクゾティズムと幼年皇帝の意志}

【第二部 幼年皇帝のいる昭和史】
第一章 クイズ少年と記憶の領土―戦前期
 {「記憶魔」のリヴレスな壺中天/幼年皇帝と朝貢国との交流/小さな貴公子のダンディズム―生きていたノーブレス・オブリッジ}
第二章 戦後青年〈アプレ・ゲール〉の衒学の伽藍―昭和二十年代
 {アンドレ・ブルトンの城館/『黒死館殺人事件』にならって/壺中天再興―少年冒険小説からシュルレアリズムへの道/鎌倉のアプレ・ゲールたち―J・コクトーとE・クイーン}
第三章 バスティーユ牢獄が崩壊した日―昭和三十代
 {「僕たちの現代史」の始まり―夜明け前の秘密結社員たち/六〇年安保とは何だったのか―バスティーユ崩壊の予兆/生産性の倫理を敵として―純粋消費から目的無き物体へ/生まれ変わったテキストのこと―『夢の宇宙誌』誕生のプロセス}

【第三部 高度成長の文化的矛盾】
第一章 高度成長の長い午後―六〇年代と澁澤龍彦
 {ダサい時代―『快楽主義の哲学』の二正面作戦/「宝石」誌という解放区―澁澤龍彦と筒井康隆の同時デビュー/高度消費社会の尖兵とされた幼年皇帝}
第二章 新しい知の台頭―七〇年代と澁澤龍彦
 {「記号」と「力」と「元型」と―進歩史観凋落の時代/これは学問ではない―新しい知と澁澤龍彦の岐路/「学界の言葉」と「市場の言葉」
第三章 復辟の朝とポストモダン―八〇年代と澁澤龍彦
 {SFと幻想文学の時代―貴公子とおうちの子の大量発生/エンターテインメントとしての「異端」/アクセサリーとしての「異端」―澁澤龍彦の大衆化/サイン会と見世物師―流謫の果ての幼年皇帝領/「読書する私」と心境小説―回帰すべき体験を求めて}
終章 昭和の子供よ、ぼくたちは―そして、平成……
 {彼はなぜ「パラダイム」を嫌ったか/イコンとしての言葉―芸術と実用とが融合する小宇宙/文化の衰弱―「自由な表現」を忘れて「表現の自由」を訴える転倒について/職人達のユートピア―専業文学者の社会的役割とは/「生活者」と「安楽死」―「死」に縁取られた生を輝かせること/専業なき時代と他者なき世代/他者のいない小説空間―玉座を降りなかった幼年皇帝/今ひとつの昭和史へのレクイエム―「すがたもきりり、こころもきりり」}

今ぞ顧みる玩物喪志の志―あとがきにかえて

巻末に主要引用文献索引、澁澤龍彦作品名索引を収録
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