1998年 四六判 ソフトカバー P235 カバー上端僅イタミ、背少時代シミ 天少汚れ
中世以降の西洋絵画や谷崎の「陰翳礼讃」、教会・寺院建築における採光、気候風土と建物からみる日本とヨーロッパの光に対するアプローチの違い、近現代の照明技術の歴史などを通して、場所や空間の「暗さ」「不均一さ」を再評価する論考集。
目次:
【I 暗さのもたらすもの】
1 鉛色の空
{「雪中の狩人たち」/寒かったブリューゲルの時代/ヨーロッパの冬空の暗さ/なぜ曇り空が青いのか/イギリスの天気/完全曇天空の性状/暗さを理解しなかった日本の文明開化}
2 『陰翳礼讃』再読
{谷崎の美意識と実生活/関西古建築巡礼/日本座敷の光の流れ/暗さと黒さの入れ子/古い建築の現代化/明るくなった日本}
3 暗いことの意味
{狩猟民族のパーティー/暗さ好きのヨーロッパ人たち/眼のはたらき/虹彩の色による眼のちがい/明るさから暗さへ/暗いときの視覚}
【II 暗さをたずねて】
1 光の文化
{気候の比較、東京とロンドン/防寒だけでよいヨーロッパ/黄昏の比較、東京とロンドン/昼間と夜間の境目/「寒暑の文化」と「光の文化」}
2 石の家
{石造住宅の窓/木材をうがち開けた窓/室内側から見た窓/絵から見積もれる照度と輝度/採光権/石の家に住むということ/石の家の居住経験から/住宅の歴史の連続性/現代版・究極の石の家}
3 ロマネスク教会の光と陰
{キリスト教建築のおおもと/実地調査の概要/特色のある教会/教会採光の三つの類型/日本の寺の礼堂/寺院の暗さの日仏比較/ロマネスク教会の終焉/教会の建物の再利用}
【III 現代に暗さをつくる】
1 照明の変遷
{石油ランプまで/ガス灯/白熱電球/蛍光灯/マイケル・ファラデイ/照明の歴史の連続性/日本の住宅照明/日欧の照明文化の比較
2 夜は暗くてはいけないか
{真の闇/光っている夜の地球/夜らしい顔/ライトアップの是非/夜のベルン/星の見える夜空}
3 オフィスビルの採光と照明
{オフィスの発生/ビルの巨大化/ガラス製箱形ビル/高層ビルの限界/新しい照明/箱形ビルからの脱皮/ビルの採光三例}
4 不均一照明のすすめ
{明るいことはよいことか/不均一ということ/均一照明/不均一照明の復活/明暗の共存の必要性/昼光の不均一性/夜の照明の不均一性}
主要参考文献
あとがき