2014年　A５判　P261　小口にごく僅イタミがある他は概ね良好な状態

“本書は、国立国語研究所が二〇一一年九月一一日に開催した第四回NINJALフォーラム 「日本語文字・表記の難しさとおもしろさ」の講演・報告をもとに、新たに執筆者を加えて一書にしたものです。
NINJALフォーラムの開催趣旨は次のとおりです。
　世界の諸言語の中で、日本語の文字・表記は最も複雑だと言われている。使っている文字も、平仮名、片仮名、漢字と三種類を駆使しているのは、日本語だけである。このことは、和語には平仮名、漢語には漢字、外来語には片仮名のように、文字表記表現としての豊かさを示しているとともに、漢字の異体字や、送り仮名・仮名遣いなどの使い分けの原因ともなっており、学習や実務での不合理さとして言及される。本フォーラムでは、印刷、放送、心理学、国語教育、日本語教育の専門家を迎えて、日本語文字・表記の難しさとおもしろさ、将来の展望について考える。”（本書「あとがき」より）

目次：
まえがき（影山太郎）

【第一部　日本語と文字・表記】
漢字とどうつきあうか（阿辻哲次）
　｛漢字とかなの使い分け／漢字の好ききらい／それでは漢字はどれくらい必要か／表記者の主体性の確立｝

「自由度」こそ日本漢字の魅力（小駒勝美）
　｛常用漢字と出版／字体訂正の基準／表外字の扱い／送り仮名、漢字の使い分けの場合／校閲という仕事のもつ意味／出版社の校閲の実務とは／日本語には正書法がない／日本漢字の楽しさ／字種上の日本漢字の特色／訓読は実は大胆な方法／複雑で種類の多い日本漢字の読み／さらに自由度の高い熟字訓／漢字の数｝

テレビと漢字（柴田実）
　｛一　テレビの特性／二　画面の文字の歴史／三　画面の文字は使い方が変わった／四　どのような文字が使われるか／五　常用漢字改定とマスコミの考え／六　技術の進歩とテレビの文字／七　画面の文字の将来｝

「コーパス」でさぐる和語や漢語のカタカナ表記の実態（柏野和佳子）
　｛一　はじめに／二　『現代日本語書き言葉均衡コーパス』／三　先行研究／四　実態調査の概要／五　調査結果／六　考察／七　BCCWJ全体調査／八　おわりに｝

日本語ローマ字表記の基準と実状（エリク・ロング）
　｛一　はじめに／二　現代の文字環境におけるローマ字資料／三　小説の表紙に表れるローマ字／四　日本語ローマ字表記の方式／五　むすび｝

【第二部　現代社会と文字・表記】
文字の認知単位（横山詔一）
　｛読み間違い／他人の空似／文字を思い浮かべる／文字を選ぶ／読みの並列分散処理モデル／文字と社会と人間（ココロ）の三者関係｝

使用場面からみた「略字・俗字」の衰退と個人文字化（鑓水兼貴）
　｛一　目的と背景／二　「略字・俗字」使用意識調査／三　結果／四　まとめ／五　おわりに｝

景観文字研究のこころみ　―「祇園」の経年変化を事例として―（當山日出夫）
　｛一　本稿の要旨／二　はじめに／三　景観文字というもの／四　「祇」を調査対象とした理由／五　祇園の地域分類で／六　祇園の表記の実態 で／七　祇園の表記の経年変化／八　まとめと今後の課題について｝

電子メディアの文字表記　―「超言文一致体」の現在と未来（三宅和子）
　｛一　グローバル化と「文字・表記」の変容／二　　打つ、押す、タッチする「文字」／三　話しことばと書きことばの接近・融合／四　「超言文一致体」の登場／五　「超言文一致体」の表記としての特徴／六　おわりに｝

【第三部　教育と文字・表記】
学校における表記の非日常性（棚橋尚子）
　｛一　はじめに／／二　学校教育における文字・表記の学習／三　おわりに｝

日本語学習者の漢字字形の選好（高田智和）
　｛一　はじめに／二　台湾での選好調査／三　字種・字体・字形の階層関係／四　調査結果／五　おわりに｝

漢字の魅力にひそむエンドレス感と西洋世界の漢字学習「システム」（シュテファン・カイザー）
　｛一　漢字の魅力と漢字神話／二　学習者にとっての漢字／三　欧米での学習スタイルと漢字学習システム／四　おわりに｝

あとがき（高田智和、横山詔一）

コラム（高田智和）
　｛表紙の文字『古今文字讃」／きき酒／「戸籍の電算化と文字／異体の仮名／さくら｝