ドグラ・マグラの夢 覚醒する夢野久作 狩々博士 三一書房

1971年 四六判 P264+英文梗概P33 帯端少破れ 函角スレ 本体元パラ少破れ、端僅イタミ

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国内文学評論・エッセイ

幻想・綺想・怪奇・シュルレアリスム・前衛・・・国内幻想文学・芸術・評論

幻想・綺想・怪奇・シュルレアリスム・前衛・・・国内幻想文学・芸術・評論夢野久作



1971年 四六判 P264+英文梗概P33 帯端少破れ 函角スレ 本体元パラ少破れ、端僅イタミ

装幀:中村宏
巻頭口絵:片山健

遺伝や脳髄、心理に関する学説、著者夢野久作の経歴や他作品、時代背景などを参照しつつ、怪奇長篇小説「ドグラ・マグラ」を読解した評論。

“私は覚悟を決めたのだ。『ドグラマグラ』を切ったり、越えたりするつもりは毛頭ないのだ。ただその胎内にいだかれて安らかな眠りを眠りたいだけなのだ。さよう、蟻地獄の中の祖述者として、スピノザの石の夢を夢みようと思うのである。
 とはいいながら、私を導いて方法意識を形成させた観念がなかったわけてはないのだ。「適当の時代に、こうした研究を想い立つであろうキチガイ学者」の一人であるこの私のモットーはといえば、〈個別科学を胎生期において夢的に捉え直すこと、即ち科学から魔梅へ!〉という幾分色あせた願いなのであった。これが予期せずして一度現実のものとなるならば、斎藤寿八博士の〈概論〉に述べられたところの〈精神科学〉と本質的に一致するところとなるだろう。
実証的事実を文学的に粉飾する一方、己が思弁をば逆に事実の形で提出するという倒錯的作品をねらった本書の存在理由はそこにあるといえるだろう(本書「序」より)”(帯裏紹介文)

“熱狂の真の意味 埴谷雄高
文学は、本来、人類の壮大なる夢にほかならないが、しかし、まぎれもなくそのような刻印を帯びた作品はまことに数少い。かかる作品はそれ自身人類史のなかの不思議な夢であるばかりでなく、それに触れるものに壮大な夢を必ず夢みさせるところの不思議な魂の連続性の魔力を備えている。
恐らく熱狂の真の意味はここだけにしかないが、『ドグラ・マグラ』に対する熱狂的な註解書といえる本書『ドグラ・マグラの夢』はその稀有な例証である。”(帯推薦文)

目次:

第一章 久作九大訪問記
 新聞記者としての久作が九大の医学部の博士達との接触を通じて、黎明期の日本精神病学をいかに吸収したかを解明するが、それは同時に正木・若林のモデル探しともなっている。

第二章 姪の浜の怪人
 ジャクソン、クレッチュマー、ユング等の所説を援用しつつ、夢と夢遊発作と狂気をつなぐ本質的共通線をさぐり、久作の〈心理遺伝論〉との関連性を究明する。

第三章 続キチガイ地獄外道祭文
 〈キチガイ地獄外道祭文〉の成立についての考察と、新版・告発チョンガレ節の展開。

第四章 胎児の夢
 〈胎児の夢〉の敷衍解釈と母親の心について言及する。

第五章 脳髄論
 脳髄の進化と身心相関についての考察。

第六章 久作余話
 戸倉万五郎の談話形式による作者夢野久作の日常。

第七章 万五郎の談話内容に関する精神科学的観察
 夢野久作に関する『ドグラ・マグラ』を中心とした漫談的パトグラフィーの試み。

第八章 大正という時代
 大正十二年の関東大震災が『ドグラ・マグラ』に落した影の拾集。大正版狂人烈伝抄、さらにはそれに関連する『ドグラ・マグラ』標題考を掲げる。

第九章 堂廻目肢意識之迷宮
 荒筋の整理とドウドウメグリ拾いと輪廻転生。そして世界文学における『ドグラ・マグラ』の精神感応的位置。

第十章 囚人第七号
 自閉と愛に関する考察、あるいは天才夢野久作の病院論。

一大附録 『ドグラ・マグラ』英文梗概(由良君由)
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