平成元年 B6判 ソフトカバー P340+索引ほかP15 カバー僅汚れ、背少ヤケ、端少イタミ 小口時代シミ
“ブレイクは今日でも大きな謎に包まれている人である。彼はすぐれた叙情詩人であるとともに、不思議に人の心に残る神秘的な宗教画を描いた画家でもある。
潮江宏三氏はこのブレイクに魅せられて、十数年の研究の結果を一つの書物にした。この著書『銅版画師ウィリアム・ブレイク』は、その長年の研究の成果であるが、まずブレイクを彼の職業であった銅版画師としてとらえ、そこからさまざまな遍歴の過程をたどったものである。氏はしばしばイギリスを訪れて、ブレイクの原資料にあたった。その点、この本は実証的に手堅い書物であるが、その背後に潮江氏の美に対する鋭い感受性が光っていて、あまりブレイクについて知識のない人々にもはなはだ興味深い本となっている。
私はこの著書を気鋭の新進美学者による労作として推薦するものである。 国際日本文化研究センター所長 梅原 猛”(カバー裏紹介文)
目次:
第一章 修業時代
「銅版画師ブレイク」/パースの素描学校その他/ブレイクが銅版画師という職業を選んだこと/「師匠選び」の逸話/師匠ジェームズ・バサイア/十八世紀英国版画界の事情/銅版画の技法と流派―トーン・プロセスの隆盛/ライン・プロセスの諸流派/ブレイクの批判と立場/ブレイクの徒弟修業/徒弟ウィリアム・ブレイク}
第二章 銅版画師ブレイク
{世の習いのままに―複製銅版画師として/トマス・ストザート/ジョン・フラックスマン/ヘンリー・フューズリ/レリーフ・エッチング、または彩飾本/銅版画の萌芽―原型的人間像/挿絵化の試みと「歴史画」の複製化/エンブレム風に―《楽園の門》/恐ろしい神―族長と預言者/悪の根源をもとめて―モノタイプの色彩版画}
第三章 この世の軋轢
{『シェークスピア・ギャラリー』、あるいは取り残された銅版画師/銅版画の挿絵―ヤングの《夜想》/おせっかいなパトロンと動物たちの《バラード》/二度目の機会は奪われて*
第四章 「銅版画家」を求めて
{理論の熟成/銅版画家として―《カンタベリーの巡礼》/最初の間奏曲―リトグラフ/新しい方法を試みる―二つの《歓楽》/再び間奏曲―木版画/「銅版画・挿絵」の集大成―《ヨブ記》/再現の試み―ダンテの《神曲》}
付録 銅版画の技法について
図版
脚注
年譜
図版説明
あとがき
参考文献
索引