1978年4刷 P229 全体に経年によるヤケ、汚れ カバー端イタミ、少破れ 本体天時代シミ
工業デザイナーである著者が1960年代から蒐集し始めた古い大工道具、木工職人の道具を多数の写真で紹介しつつ、それらにまつわるエピソード、歴史、職人からの聞き書きなどを記す。
“この本に写真に撮って収めた道具は、私がこの十数年の前半に蒐めたもので、あるものは古道具屋の土間の片隅に、あるものはゴミの中に、何点かは売れ残って大工道具屋の店に、いずれも見捨てられたようにあったもの。中に、転廃業に追込まれた大工・下駄・桶職の道具一式も含まれている。いまとなってはこうした道具は集めようがない。古道具屋がなくなってしまったし、職人の転廃業も、もう終ってしまったから……。
この一冊に収めた聞き書「道具拝見」は、四十六〜四十七年にかけて全国の箪笥・錺職・鍛冶職などの仕事場を訪ねて聞いた道具使いの心の記録だが、これからはこうした聞き書も難しいことになる。
〈略〉
この本で取扱った「木工具」と「木工の技術」とは、一九七七年現在、すでに死んだ生産技術で、これからの生産の役に立つことはあるまい。
しかし、人と道具とのかかわりかた、道具の心は永遠に不変。これからの生産の役にも必らず立つ。
そのことを、書きとどめたかった。”(巻頭「はじめに」より)
目次:
【道具と日本人】
道具と私 {工具と道具/飛騨高山の道具屋で/大鋸/銘/錐/面取鉋・円鉋/墨壺/「万博」なら貸さぬ/溝鉋・際鉋/道具づくりの作法/研ぐことの喜び/砥石/小さな鋸たち/桶/鉋の台/輪島にて/わかれ}
道具と日本人 {消えゆく道具/動物工具/捨てられた道具/釘と付属工具/継手と仕口/くさびとねじ/にぎり/鉇(やりがんな)/金槌/物差し/刃物の裏/座業の道具/土間で鍛える鋸}
職人の生命・道具 {墨壺と鉇/日本人のクセのなさ/産業ニッポン/一億総素人時代/めいめいのまち/個人の技術と個人の道具}
【道具と職人】
道具拝見 {木工芸―小川正八/桐箪笥―松本錫蔵/鉋鍛冶―三代目千代鶴延国/竹編み―宮崎珠太郎/桐のくり物―中台瑞信/数寄屋大工―神谷貞一郎/組子―佐藤重雄/ギター作り―河野賢/表具―向井一太郎/京指物とクラフト―和田伊三郎/錺師―森本安之助/鋏鍛冶―川澄国治/木彫―山本栄雲/彫刻刀の鍛冶「小信」―滝口清/琴・柿沢真泉の後継ぎたち/黄楊櫛―竹内勉/漆刷毛師―泉清吉/京の下駄職の残した道具/木曽藪原の桶職―小林善美/建具・初代「建東」こと宮内東吉}
【木工具の歴史】
大鉋と鉋・木工具コレクション考
付・道具名称解説