1973年 A5判 P316 カバーヤケ、イタミ 小口ヤケ大、時代シミ 巻頭数ページ端ヤケ大、時代シミ多
“S/Zは、バルザックの中篇小説『サラジーヌ』に登場するSarrasine とZambinellaのイニシャルを表わしている。『サラジーヌ』は、天才的な青年彫刻家のサラジーヌが、イタリアの美しい去勢歌手ザンビネッラを女性として愛してしまったために暗殺される悲劇的な事件を背景に、ザンビネッラがのちに特異なプリマドンナとして巨万の富をたくわえ、その身内がパリ社交界で繁栄する場景を眺めた小説である。
ロラン・バルトは、この小説のはじめから終りまでを、561の意味作用をもたらしうる最小の機能単位に分割する。そして主に、言語学上の弁別要素であるコノテーションの視点から、この機能体のレヴェル、人物の行為のレヴェル、物語の説話行為のレヴェルとが、相互に関連し複雑に機能するさまを記述し、『サラジーヌ』の去勢的世界、1830年代パリ社交界のエクリチュール、古典的テキストのもつ多義性と豊穣さへの手段をトータルに浮び上らせる。
プロップ、レヴィ=ストロース、ヤーコブソンが、民話や神話や詩において試みたように、小説のジャンルにおいて構造分析を試み、《文学の科学》をめざしたバルトの意図は、「物語の構造分析序説」の理論的デッサンを経て、本書『S/Z』においてみごとな結実を得た。”(カバー裏紹介文)
目次:
凡例
ジョルジュ・バタイユ『空の青空』から
1 価値判断/2 解釈/3 コノテーション:反対意見/4 それでもなお、コノテーションを擁護する/5 読書、忘却/6 一歩一歩/7 ひびを入れたテキスト/8 砕かれたテキスト/9 読書はいくつあるか/10 サラジーヌ/11 五つのコード/12 声の織物/13 シタール/14 対照I:付加物/15 楽譜/16 美/17 去勢の陣営/18 去勢歌手の子孫/19 指標、記号、金/20 声のフェイディング/21 イロニー、パロディー/22 ごく自然な行為/23 絵画のモデル/24 遊びとしての変形/25 肖像描写/26 記号内容と真実/27 対照II:結婚/28 作中人物と外形/29 白大理石のランプ/30 彼方と此方/31 混乱した模写/32 引延し/33 および/あるいは /34 意味のおしゃべり/35 現実的なもの、操作し得るもの/36 たたむこと、展げること/37 解釈論的な文/38 契約としての物語/39 これはテキストの説明ではない/40 主題論的傾向の誕生/41 固有名詞/42 クラスのコード/43 文体の変形/44 歴史上の人物/45 価値の下落/46 充足性/47 S/Z /48 定式化されない謎/49 声/50 寄せ集められた肉体/51 ブラゾン/52 傑作/53 婉曲語法/54 後側に、もっと奥に/55 自然としての言語活動/56 木/57 宛先の線/58 物語の利益/59 三つのコードが一緒に/60 ディスクールの決疑論/61 自己陶酔的証拠/62 両義性I:二重の解釈/63 心理学的証拠/64 読者の声/65 《口論》/66 読み得るものI:《すべてはつながり合う》/67 どのように酒宴は行われたか/68 編み糸/69 両義性II:換喩的な嘘/70 去勢状態と去勢作用/71 移された接吻/72 美学的証拠/73 結論としての記号内容/74 意味の統御/75 愛の告白/76 作中人物とディスクール/77 読み得るものII:被限定辞/限定辞 /78 無知がもとで死ぬ/79 去勢以前/80 解決と真相暴露/81 人格の声/82 グリサンド/83 世界的流行病/84 充実した文学/85 中断された模写/86 経験の声/87 知識の声/88 彫刻から絵画へ/89 真実の声/90 バルザック的テキスト/91 修正/92 三つの入口/93 考え込むテキスト
付録1 バルザック『サラジーヌ』
付録2 行動の連鎖(ACT)
付録3 内容別目次
訳者あとがき