1984年3刷 四六判 P303+索引P10 カバースレ、少イタミ
バリ島演劇に登場する魔女ランダをとりあげた表題論考『魔女ランダ考』を端緒として、西洋の文学作品や演劇、思想、心理学、社会学などの文献を引きつつ“演劇的知”“ベイトソン理論”といったテーマについて考察した論考5篇を収録。
“バリ島の文化に深く根をおろし、人気ある演劇の主人公として人々と共に生きている魔女ランダ―その世界を虚心にみつめ、そこに近代化した社会が葬り去った死や痛みなども含む〈パトスの知〉を発見する哲学者は、ここから既成の知のダイナミックな組換えを企てる。身体と精神、遊びと真面目といった二分法を越える仕掛け・暴力といったテーマに肉迫し、われわれがもつ世界観に根底から揺さぶりをかける。そこにより豊かで陰影に富んだ世界の見方である〈演劇的知〉が立ち現れる。”(カバー袖紹介文)
目次:
はじめに
【I 魔女ランダ考】
一 問題との出会い/二 ランダの深層/三 バリ島のコスモロジー/四 〈不死不滅の空〉/五 ランダとグレート・マザー/六 生と死/七 バリ島の〈パトスの知〉
【II 演劇的知とはなにか】
一 遊びと真面目の二分法/二 対話の原理を超えて/三 ニーチェのソクラテス批判/四 チェーホフの近代性と反近代性/五 〈演劇的知〉の三つの構成原理/六 〈臨床の知〉へ
【III 問題群としての〈子供〉】
一 〈怒れる若者たち〉から〈荒れる少年少女たち〉へ/二 〈子供〉と〈見えない制度〉/三 〈子供〉の誕生と〈子供〉の理性/四 専門家の条件と〈ダブル・バインド〉/五 〈分裂生成〉と負のヒーロー
【IV 原理としての〈子供〉から〈女性〉へ】
一 身近な深層的人間/二 〈最後の植民地〉/三 アリストテレス・デカルト・フロイト/四 〈アダム原則〉と性自任/五 文化としての性の分割と両性具有/六 女性原理と〈演劇的知〉/七 〈異性装〉のひらく世界
【V 仕掛け・文化・暴力】
一 機会と仕掛/二 〈言語機械〉/三 行動・受苦・認識/四 政治の幅・生活の幅/五 文化と暴力/六 供犠と法体系/七 〈劇場国家〉から魔女ランダへ
あとがき
索引