昭和62年 四六判 P211 帯僅背ヤケ カバー少イタミ 見返し上角少剥がし跡 ページ僅汚れ、僅鉛筆消し跡
“穢い絵ではいかんのか
異色画家が放った日本画壇への一撃”(帯文)
“美しい絵だけが絵なのか?
甲斐庄楠音の忘れ去られていた作品群は、我々を根底からえぐる。不条理な肉体存在である人間を見据える冷徹な眼差しが、そこにはある。その厳しさゆえ、一度画壇注視の人となりながら、大正十五年作「女と風船」で楠音は“穢い絵”の烙印をおされた。その日以来、画家は穢い絵で綺麗な絵に打ち勝たねばならぬと胸中深く刻み込む。しかし……”(帯裏紹介文)
目次:
序章 謎の出逢い
{一枚の絵/「七つの悪霊の棲む女/灼熱の情念を}
第一章 生い立ち
{楠正成の末裔/母親似の少年/幼時の思い出/一篇の短篇小説/村山龍平を中心に/皇女和宮の遺品/明治の末の京都/非凡な目}
第二章 華々しいデビュー
{青春/画壇にデビュー/京の若い日本画家たち}
第三章 「横櫛」の反響
{第一回国画創作協会展/天才グループに可愛がられる/デビュー作「横櫛」/村上華岳、国展から去る}
第四章 穢い絵か美しい絵か
{穢い絵事件}
第五章 女とモデル
{汚辱を背負って女を描く/モデルと女/入賞のいきさつ/そろって落選する/竹内栖鳳の女性モデル/村上華岳の「裸婦図」/同性愛なればこそ……/舞妓と麦僊/女の側に立って眺める/“愛する者”を奪われる/しみじみとした京の暮らし/戦争で絵筆を断つ}
第六章 映画界のカイさん
{映画界への転身/溝口グループの生活/二人の女人讃歌/「旗本退屈男」の衣裳}
第七章 山賊会
{「山賊会」のこと/水谷八重子の画帖/隠れた仲間たち}
第八章 最後の展覧会
{八十二歳の回顧展/「絵描きに絵を裁かれる」/虹のかけ橋}
終章 壮絶な遺作
{最後の未完の遺作「畜生塚」/色彩のないドラマ/日本画と洋画の接点/官能的芸術家の最期}