2004年 A5判 ソフトカバー P243 帯背ヤケ
“尾崎紅葉から野村たかあきまで、様々に描かれた姿を通して、日本人の子ども観、教育観、児童文学観などの移り変りを見る。”(帯文)
“知名度ナンバーワンである桃太郎が、100年以上におよぶ歴史の中で、実に複雑な様変わりを見せてきた。本書では、この愛すべき民話の主人公が、その時々の政治的・社会的・文化的な変化と共に振子のように揺れ続けてきた、その変遷の諸相を探る。”(カバー袖紹介文)
目次:
第一章 皇国の子・桃太郎
{創世記の桃太郎ばなし/尾崎紅葉の『鬼桃太郎』/巖谷小波の『桃太郎』/石橋思案の『是非御覧日本一』/硯友社の特徴/紅葉の趣向と文体/小波の趣向と文体/小波『桃太郎』の創作性/小波の解釈と姿勢/ナショナリズムの投影/紅葉におけるタブー/思案の趣向と文体/森桂園の『鬼が島』/桂円の創作性/小波の影響/桂園の桃太郎観/小波の桃太郎観/『桃太郎主義の教育』/征露桃太郎絵本の輩出/不幸な出発}
第二章 童心の子・桃太郎
{「赤い鳥」時代の幕あけ/童心主義の主張/童謡詩人たちの童心主義/槇本楠郎の批判/北原白秋の二つの童謡/童心と郷愁/巽聖歌の「むかし」/新見南吉の「鬼が島」/柳沢健の「桃太郎」/三木露風の「桃太郎」/浜田広介の「桃太郎」/浜田広介の「桃太郎の足のあと」/広介の桃太郎観/北川千代の「犬にあふまで」/千代の桃太郎観/楠山正雄の「桃太郎」/松村武雄の「桃太郎」/大正自由主義の投影/相馬泰三の『桃太郎の妹』/お桃の誕生と冒険/エンターテイメントの大ロマン/泰三の桃太郎観/「平和の剣」の意味}
第三章 階級の子・桃太郎
{プロレタリア児童文学の勃興/プロレタリア児童文学の功罪/江口渙の「ある日の鬼ヶ島」/階級的視点への傾斜/入交総一郎の「新桃太郎の話」/ヒーローへの期待/坂梨光雄の「その後の桃太郎」/ストライキのイメージ/黒板平八の「桃太郎征伐」/ウンコまみれの桃太郎/プロレタリアートの国際的連帯/光成信男の「面目をつぶした話」/不明瞭な主題/文学大衆化への実験/本庄陸男の「鬼征伐の桃太郎」/明快な主張/プロレタリア児童文学と桃太郎/価値観の転換}
第四章 侵略の子・桃太郎
{軍国主義下の児童文学/児童文学の復興現象/佐藤紅緑の「桃太郎遠征記」/外国の悪影響/桃太郎の外征/桃太郎の世界制覇/排他思想と外国侵略/紅緑の士族主義/マンガ映画『桃太郎の海鷲』/阪本越郎の「隣組の桃太郎」/百田宗治の「桃太郎出陣」/森三郎の二つの作品/「桃太郎の夢」と少国民文学/国語教科書の「モモタラウ」/講談社の絵本『桃太郎』}
第五章 民衆の子・桃太郎
{戦犯・桃太郎へのみそぎ/奈街三郎の「ただの桃太郎」/働く者の一員桃太郎/冨田博之の「桃太郎」/民衆の子の造型/再話と再創造/桃太郎の今日的解釈/第二次民話ブーム/松居直の『ももたろう』/結末の問題点/大川悦生の『ももの子たろう』/生命誕生の強調/松谷みよ子の『ももたろう』/寝太郎型の桃太郎/佐藤さとるの『宇宙からきたかんづめ』/タイムトラベルSFの桃太郎/寺田ヒロオの『スポーツマン金太郎』/流行性と話題性/アイドルとしての桃太郎/奥田継夫の『鬼の子太郎』/山口理の『あたしが桃太郎になった日』/川崎洋の「でるでるモモタロウ」/野村たかあきの『やんちゃももたろう』}
おわりに
子どものための桃太郎ばなし一覧