1993年初版 A5 P353 カバー僅ヤケ
「本書は、恐竜研究にはさまざまな分野からのアプローチがあることを示唆し、将来の日本における恐竜研究者養成のためのひとつの教科書となることをも志向している。すなわち、扱う素材は恐竜そのものではなくとも、恐竜の研究に応用可能な内容を含むもの、恐竜との関連あるいは比較が示されていて、あらたな恐竜研究を触発しそうなものなど、恐竜学の体系にとって将来への統合へと導き得る要素はできるだけ提示しておきたい。したがって、本書は恐竜研究の網羅的なレビューではなく、執筆者の研究の視点を明らかに示しながら、その発想が恐竜学にいかに応用できるかを示すものである。」(序文より)
目次:
はじめに
第1章 恐竜学序論(小畠郁生)
1.1 恐竜の発見 {発見・発掘史/恐竜の分布/化石の記録と大陸の接続/産状とタフォノミー}
1.2 恐竜の系統分類 {恐竜の起源/形態と分類}
1.3 恐竜の古生物学 {骨の研究/恐竜の卵の研究}
1.4 日本での研究の意義 {恐竜の時代論/ニッポノサウルス/現地性と異地性/さまざまなアプローチ}
文献
第2章 恐竜の復元(犬塚則久)
2.1 古生物の復元 {復元/復元の方法/復元の過程}
2.2 形態復元 {骨格復元/筋肉復元/生体復元/体格・体重の推定}
2.3 生態復元 {ロコモーションと運動機能/食性と節食機構/生息地/生活様式}
文献
第3章 恐竜の歩行(山崎信寿)
3.1 運動の復元手法 {基本的考え方/現生動物の体形と運動の関係―テナガザルの場合/原生動物の体形と運動の関係―ヒトの場合}
3.2 二足恐竜の歩行復元 {二足恐竜のモデル化/脚の運動範図の推定/関節特性の推定/二足恐竜の歩行姿勢/体形と歩行の関係/移動速度の推定}
3.3 運動における内力の作用 {跳躍運動/内力を考慮した運動復元の可能性/内力を考慮した形態復元の可能性/「復元学」の展望}
文献
第4章 翼竜の力学(杉本剛)
はじめに
4.1 研究の流れ {復元理論の変遷/飛翔性の実証}
4.2 飛膜の科学 {力学的特性の解析/最適形状の設計}
4.3 プテラノドンの飛行力学 {滑空性能の解析/運動性能の検討}
文献
第5章 恐竜の生理(瀬戸口烈司)
5.1 恐竜温血性説 {発端/日本国内の論調/それ以前の恐竜論議/爬虫類は行動で体温の調節をはかる/ディメトロドンとエダフォサウルス/Russelの先駆的な恐竜温血性説/恐竜の心臓は鳥類と同じ/古気候学との関連からの論議/Bakkerの登場/慣性恒温性説}
5.2 脊椎動物の脳の進化 {恒温性と新皮質の進化/脳の進化の初期の研究/脳容量の進化/恐竜にもあてはまる/中生代の動物の脳の研究/新皮質は哺乳類で形成される/爬虫類と哺乳類の脳を比較するのは困難/哺乳類の脳の進化の要因/鳥類の脳の進化}
5.3 哺乳類の恒温性の獲得 {哺乳類様爬虫類の体温調節機能/物質代謝率の高い獣弓類の哺乳類様爬虫類/呼吸様式の変革―その1/呼吸様式の変革―その2/呼吸様式の変革―その3/恒温性は獣弓類で獲得/首の長い恐竜の呼吸方法/酸素供給と脳死/恒温性の利点/まとめ}
文献
第6章 恐竜時代の植物(木村達明)
はじめに
6.1 おもな中生代植物の分類群
6.2 中生代の植物群 {三畳紀前半期の植物群/三畳紀後半期の植物群/ジュラ紀初期の植物群/ジュラ紀中期の植物群/ジュラ紀後期〜白亜紀前期の領石型植物群/手取型植物群/白亜紀後期植物群/大型陸上植物食恐竜の食物}
文献
第7章 絶滅(平野弘道)
7.1 絶滅した古生物 {絶滅とは/絶滅した古生物/キュビエの説明/古生物学者の説明(1960年ごろまで)}
7.2 地質年代に見る主要絶滅と種面積説
7.3 確率論的観点の重要性 {生物種に寿命はない/確率論的同時絶滅}
7.4 中生代末の絶滅 {中生代末の絶滅/隕石は落下した/隕石衝突説を肯定する事実/絶滅周期説の登場/隕石衝突説を否定する事実/アンモナイト古生物学者の軌跡/中生代の海洋変革}
7.5 絶滅要因としての気候変動 {スタンレーの気候変動論/ラーソンのスーパー・プルーム/ホフマンの総合説}
7.6 自然選択か確率的生存か
文献
巻末に索引、執筆者紹介を収録