
1992年増補初版 四六判 P302 カバー背ヤケ、角僅濡れ跡 裏遊び紙少剥がし跡
目次:
Ⅰ 肉体の誕生―ジョイスの時代
一、三つの支配者 (イギリスの支配/ローマの支配/アイルランド文芸復興運動の支配)
二、麻痺した民俗の魂―『ダブリンの人びと』をめぐって― (宗教的指導者の頽廃/政治的指導者の欠如/半植民地的状況/外国への憧れと文化的低迷/「生きながらの死」二つ)
Ⅱ 魂の目覚め―芸術家の形成
一、ジョイス美学の構築 (処女評論『いばらの冠をいただいたキリスト像』/『ドラマと人生』/イプセンの弟子として/象徴派詩人たちの影響/『マンガン論』/エピファニイ/「パリ・ノート」/『芸術家の肖像』/『スティーヴン・ヒーロー』の美学)
二、『死せる人びと』―表象の多重性―
三、『若き芸術家の肖像』―黒と白の相剋― (アウトサイダーとしての意識/天職への開眼/誘惑者からの脱出/付『肖像』の美学について)
四、『亡命者たち』―イプセンとピンターのはざまで― (望郷の念/イプセンにならいて/「創作ノート」の発見/ピンターの眼を通して/芸術第一の道を)
Ⅲ 魂の飛翔―ジョイスの文学
一、『ユリシーズ』―シンボリズムとリアリズムの結合― (その主題―簒奪―/ブルーム―妻に裏切られた男―/幕間―シェイクスピアにみる理想像―/アイルランドのナショナリズム/フィナーレ/文体に関するメモ)
二、『フィネガンの通夜』―ヴィーコ、ブレイク、ジョイス― (『フィネガンの通夜』とはどんな作品か/梗概―第一部・大人たちの書/梗概―第二部・子供たちの書/梗概―第三部・民衆の書/梗概―第四部・回帰/『フィネガンの通夜』の主題―1 夢の中での抑圧の解放・2 原罪の追及・3 父の権力の簒奪・4 兄弟の対立・5 償い者としての女性―/ヴィーコの影響はどこまで認められるか/ジョイスとブレイク/ブレイクの後期予言書との関連―『四人のゾア』の場合・『ミルトン』の場合・『ジェルサム』の場合―)
Ⅳ おわり、そしてはじめに
一、ジョイス文学の理解のために―通時的に― (モダニズムとポスト・モダン/モダニストたちの変節と裏切り/文学理論の変遷/コリン・マッケイブの登場/テル・ケル派とアルチュセール派)
二、ジョイスの言語論のためのノート (マイナー文学として/言葉、ことば、コトバ)
ジョイス年譜、出典及び註、あとがき
増補Ⅰ ジョイスをめぐる戯画的作品について (一、テリー・イーグルトン『聖者と学者の国』/二、レーモン・クノー『女性にやさしく』/三、トム・ストッパード『茶番劇』)
増補Ⅱ 英国の批評の現状(一九九〇~九一年) (一、ケンブリッジ大学英文学部/二、ピエール・マシュレーの『文学生産の理論』/三、さまざまな講義/四、エルマン講師の「ユリシーズ論」/五、クリステヴァの「アブジェクシオン」)