1999年 四六判 P190 帯背折れ跡 カバー端少イタミ
中世ヨーロッパで広く流布していた聖ブランダンの物語の一ヴァリエーションとして、1476年ドイツで出版された民衆本『聖ブランダン航海譚』を冒頭約60ページで翻訳、後半部は作品成立の背景や、作品から垣間見るケルトやキリスト教といった信仰の民衆レベルでの受容、異界についての空想などについて解説する。
“宗教改革前夜における中世民衆の思想と文化を往時の《ベストセラー》の中に読み取る!”(帯文))
“昔、アイルランドにブランダンという名の修道院長がいた。彼は天地創造や神による奇跡などの書かれた書物を読んだが、その内容が信じられず書物を火中に投じてしまう。すると天使が現れ、神の奇跡を疑った罰としてブランダンに九年間海上をさまよい、創造の不可思議な事柄をおのれの目で見るように命じる。そこで修道院長は十二名の敬虔な修道士たちとともに冒険の旅に出るが……”(帯裏紹介文)
目次:
聖ブランダン航海譚
解説
プロローグ {ドイツの民衆本/中世の文学に現れたブランダン/その祖型}
アイルランドの章 {遥かな遠い国/聖パトリック、そしてシャムロックの花/キリスト教の伝播/実在の聖ブランダン}
異界I {ユダ/聖パトリックの煉獄/煉獄/悪魔/善き男}
異界II {鯨/異界のメルクマール/磁石山と魔の海/城/楽園/のらくら天国/異形の人びと}
エピローグ {中世のベストセラー/伝説の終焉}
テキストと参考文献
藤代幸一著訳書目録
あとがき