1991年3刷 四六判 P298 カバーキズ、背ヤケ、上端イタミ 小口少汚れ
“ダーウィンとは独立して自然淘汰による進化説を唱えたウォレス。二人の論文はリンネ学会で同時に発表され、進化論の大革命を引き起こした。ウォレスは、ヨーロッパ人として初めて未知の熱帯アマゾン奥地やマレー諸島に分け入り、数々の調査をおこなった。彼は、「熱帯とは何か」を探求し続け、これを博物学の手法で見事に描ききった。本書では、ウォレスが踏査した熱帯の自然と動物の姿がいきいきと描かれ、どくに第六章のダーウィンに反論した色彩論は注目に値する。”(カバー袖紹介文)
目次:
訳者序文
序言
一 赤道地帯の気候と地勢
{地球上の三大区分/赤道地帯の気温/赤道付近がつねに高温である理由/土壌の熱の影響/大気中の水蒸気の影響/赤道地帯の気温に及ぼす風の影響/大気中の水蒸気の凝結による熱/赤道地帯の気候の概観/赤道地帯の気候はどの地域でも一葉であること/赤道地帯の短い黄昏/赤道地帯の天空の特徴/赤道における気象現象の強度/結語}
二 赤道地帯の植物
{赤道地帯の森林帯とその起源/赤道林の概観/森林の大木の特徴/森林の中〜下層の樹木/花の咲く幹とその原因/赤道地帯の樹木の用途/赤道地帯の森林の攀緑植物/ヤシ/ヤシの用途とその製品/シダ植物/ショウガと野生バナナ/アラム/タコノキ/ラン/タケ/タケの用途/マングローブ/感覚植物比較的に花の少ないこと/熱帯植物についての結び}
三 熱帯林の動物
{赤道森林の動物についての概要/昼行性の鱗翅類/熱帯のチョウ類の特異な習性/アリ、カリバチ、およびハナバナ/アリと植物との特殊な関係/カリバチおよびハナバチ/直翅類およびその他の昆虫/甲虫/翅のない虫/熱帯地方の昆虫に関する総括/鳥類/オウム/ハト/ピカリア/カッコウ類/キヌバネドリ、ゴシキドリ、およびオオハシ類/燕雀類/爬虫類と両生類/トカゲ/ヘビ/カエル/哺乳類―サル/コウモリ/熱帯地帯の動物相に関する総括}
四 ハチドリ
{形態および解剖学的特徴/色彩と装飾/名称/ハチドリの運動と習性/雄が装飾を誇示すること/食物巣/地理的分布と変異/変異と自然淘汰の例証となるファン・フェルナンデス諸島のハチドリ/ハチドリの類縁関係/疑わしい類縁関係はどにょうにして決めるか/アマツバメとハチドリの類似/タイヨウチョウとハチドリの相違}
五 動物の色彩と性淘汰
{熱と光が色彩を生じさせるという説/有色光によって起こされる動物の色彩の変化/生物の体色の分類/保護色/警告色/雌雄色/典型色/色の性質/動物の色はどのようにして生じるか/色は生物に必然的に生じる/保護色に関する説/警告色に関する説/模倣的警告色すなわち擬態に関する説/雌雄色に関する説/甲虫の角の用途について/ある昆虫の雌が非常に美しいことの理由/雄の鳥の飾り羽の起源/雄が装飾を誇示するという説/性淘汰を相殺する自然淘汰/鳥の雌がかえって美しい場合/ハチドリに見る色彩の発達/典型色に関する説/色彩発達の地方的原因/動物における色彩発達についての摘要}
六 植物の色と色彩感覚の起源
{植物の保護色と擬態/果実の魅惑色/果実の保護色/花の魅惑色/花の魅惑的な香り/魅惑的な花の集合/高山植物はなぜ美しいか/なぜ近縁種の花の大きさや美しさが異なるか/風媒花における色彩の欠如/動物および植物に共に適用される色彩の説/花の色と地理的分布との関係/花と果実の色に及ぼす光の直接作用に関する最近の見解/色彩感覚の起源について/歴史時代における色覚の発達について/色彩感覚に関する結論}
解説 アルフレッド・R・ウォレスとその時代(新妻昭夫)